自身のドッペルゲンガーと対峙する作品。
来場者の姿をその場でスキャンし、バーチャル空間で「自分」とのインタラクションを行います。
それを通じて、自己というものに新たな視座をもたらします。
他人事/自分事を隔てるN人称は、あなたに無断であなたの思考に影を落としています。
体験する(思考する)視点が異なるだけで、物事の印象はガラッと変わってしまいます。
他人にアドバイスをするなら冷静でいられるのに、いざ自分のこととなると
一人称のバイアスによって冷静でいられなくなってしまうのが人間です。
本作品では、多様なシチュエーションを通じて、分身と共生について多角的に問いかけています。
分身アバタによる自己イメージの外在化によって、
自己との心理的距離を制御する方法についての考察を行いました。
Publication
・VRクリエイティブアワード2019 1次審査通過
http://vrc.or.jp/award2019/
・Yuji Hatada, Shigeo Yoshida, Takuji Narumi, and Michitaka Hirose. 2019.Double Shellf: What Psychological Effects can be Caused through Interaction with a Doppelganger?. In proceedings of the Augmented Human International Conference 2019 (AH2019), March 11–12, 2019, Reims, France.ACM, New York, NY, USA, 8 pages.
doi = 10.1145/3311823.3311862
・東大制作展「Dest-logy REBUILD」
http://www.iiiexhibition.com/#modal_work2
・東大VRサークル UT-virtual 春祭り「ば展」
http://bah-exhibition.utvirtual.tech/
・VRゴーグルで驚きの体験が! 人間の可能性をアップデートするVRについて東大の研究者に聞いてみた
https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20181226_03?page=02
ゴーストエンジニアリングとドッペルゲンガー
VR環境でのアバタ(身体変容)体験は、ユーザのゴースト(情動、認知機能、思考様式など)に
影響を与えることが知られています。これをプロテウス効果と言います。
「ゴーストエンジニアリング」は、プロテウス効果などの知見を活用しながら、
工学的な身体拡張体験を通じて、自分では制御の難しい認知バイアスを自在に編集する技術です。
他方、人の思考は、自他の立場の違いがもたらす「心理的距離」からもバイアスを受けています。
他者が直面する状況と自己が直面する状況では、たとえ性質が同じ問題でも
異なる意志決定・問題解決等がなされるのです。

分身アバタを用いて、VR環境で自己を擬似的に第三者として提示することで、
自己を客観的に捉えやすくし、認知バイアスを制御する手法の構築する。
二重人殻はその最初の一歩です。
フロイトによれば、人類の自己愛は少なくとも三度傷ついている。
一度目は天動説の凋落、地球は「世界の中心である」という王座から引きずり降ろされた。
二つ目は進化論の提唱、人類は「動物の中で特別な存在である」という地位も剥奪された。
三つ目は無意識、「この重たき自己の身体は、必ずや意のままになる」という確信さえ揺らいだ。
そして、ドッペルゲンガーとの共生は、その四度目の負傷だ。

もしも我々のこのどうしようもない一人称をテクノロジーが打ち砕き、
自己像を客体化できた時、人類はより自由な眼差しを獲得し得るだろうか。
また、彼岸と此岸の境界が崩されてなお、人類の自己愛は無事でいられるだろうか。
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