JST CREST · 2023–

知覚と感情を媒介する認知フィーリングの原理解明

統合失調症当事者の幻聴・幻視体験をVR/ARで表現し、コミュニティで分かち合う。認知フィーリングの科学と当事者研究をつなぐプロジェクトです。

同じ「見える」「聞こえる」でも、その体験が本人にとってどんな手触りを持つかは、外からは窺い知れません。JST CREST「知覚と感情を媒介する認知フィーリングの原理解明」(代表: 長井志江特任教授・東京大学)は、知覚に伴うこの主観的な感触——認知フィーリング——の科学に挑むプロジェクトです。

僕はこの中で、当事者研究の第一人者である熊谷晋一郎先生のチームに加わり、統合失調症の当事者が経験する幻聴・幻視の体験世界を、VR/ARで表現し、分かち合う研究を担当しています。フィールドは、当事者研究発祥の地である北海道・浦河べてるの家。当事者へのインタビューをもとに幻聴・幻視の体験をVR/ARで作り、それを現場に持ち込んで、本人や仲間たちと一緒に眺め、語り合う共創ワークショップを重ねてきました。

幻聴・幻視の体験は、正確に測って再現する対象である以上に、対話の中で共に編み直されていく物語でもある——この視点の転換は「共同創造から共同妄想へ」という言葉になり、精神医療の専門誌やべてるの家40周年記念講演を通じて、当事者研究のコミュニティに共有されています。

2025年度からは、CRESTの若手チャレンジ制度で「多人数リアルタイム身体化インタラクション対応の幻聴幻視体験VRプラットフォーム」の開発も始めました(研究代表)。一対一のワークショップを、コミュニティ全体で同時に体験を分かち合える場へ。技術の側も、当事者研究の思想に追いつこうとしているところです。