JST ASPIRE · 2025–2031
Enhancing Humanity: 多様な身体性を包摂する次世代身体拡張技術の社会実装に向けた国際研究ネットワーク
日本で生まれた「アバターで働く」という実践を、世界の現場へ。日・米・英・仏・伊をつなぐ6年間の国際共同研究です。
東京・日本橋の分身ロボットカフェでは、外出が難しい人たちがロボットやアバターを遠隔操作して接客しています。この「身体を拡張して社会に参加する」という実践は、日本発の研究として世界から注目されてきました。では、この技術は日本の外——たとえば医療や福祉の資源が限られた国々——でも、人の暮らしに寄り添えるのでしょうか。
ASPIRE「Enhancing Humanity」は、この問いに応えるための国際研究ネットワークです。慶應義塾大学の南澤孝太教授を代表に、身体拡張技術の研究者が日米欧から集まりました。ロンドン大学(UCL)のグローバル・ディサビリティ・イノベーション・ハブ、MITメディアラボ、シカゴ大学、シエナ大学、そしてフランスの国立研究所INRIA。それぞれの国の当事者コミュニティと一緒に技術を育て、アフリカや南アジアを含む世界の現場で実証していきます。
僕が担当するのは身体認知拡張の領域です。アバターで身体が変わるとき、人の認知や自己——「自分は何者か」という感覚——はどう変わるのか。疑似触覚(pseudo-haptics)研究の第一人者であるINRIAレンヌのアナトール・レキュイエ博士のチームと組み、アバター体験がもたらす認知の拡張とアイデンティティの変容を追いかけます。分身ロボットカフェで積み重ねてきた現場研究を、国際共同の文脈へ開いていく役回りです。
このプロジェクトのもう一つの柱は、次世代の研究者を「複数の国を巡りながら」育てることです。博士学生が3か月ずつ複数の海外拠点を巡回して共同研究する仕組みを整えており、僕の研究グループからも、高齢者のアバター就労を研究する学生が海外の現場に飛び込む計画が動いています。
身体の多様性を、克服すべき欠損ではなく、技術と社会の側がひらいていくべき可能性として捉える。その視点を世界の仲間と共有できることが、このネットワークの何よりの財産だと感じています。