VRSJ論文誌 2021
三人称視点アバターによるSelf-Distancing
遠くから自分を見ると、悩みの解き方が変わる
自分のアバターを外側から眺めながら操作すると、悩みごとへの心理的距離が生まれる。三人称視点が「セルフ・ディスタンシング(self-distancing)」を引き起こすかどうかを検証した実験研究です。
「その問題を自分事ではなく、他人事として眺め直すと、意外な解決策が見えてくる」——これは心理学で知られる現象で、「心理的距離」を置くこと(self-distancing)が、洞察力や創造的な問題解決を助けることがわかっています。人は自分の悩みより他人の悩みの方が、客観的で創造的な解決策を思いつきやすいのです。
背景
VRでは、自分自身のアバターを、まるで幽体離脱したかのように三人称視点(背後や斜め上から見下ろす視点)で操作することができます。この「アバターを外側から眺めながら操作する」という体験が、self-distancingと同じような心理的距離を生み出し、問題解決に良い影響を与えるのではないか、という仮説からこの研究は始まりました。
リサーチクエスチョン
VR空間で自分のアバターを三人称視点から操作することは、一人称視点で操作する場合と比べて、心理的距離を生み出し、洞察力や創造性を要する課題の解決成績を向上させるか。
研究の方法
参加者に、洞察力を要する課題と創造性を要する課題の両方に取り組んでもらう実験を行いました。条件は「一人称視点」で自分のアバターを操作する場合と、「三人称視点」で外側から自分のアバターを眺めながら操作する場合の2つ。同一課題を異なる視点条件で解いてもらい、心理的距離の測定と課題の成績を比較しました。
わかったこと
三人称視点条件は、一人称視点条件に比べて心理的距離を高め、洞察力を要する課題でより高い成績を示しました。一方、創造的なアイデアの「量」については、視点による有意差は見られませんでした。この結果は、VRのインターフェース設計において、視点操作を心理的距離のデザインツールとして活用できる可能性を示しています。