VRSJ 2023
分身ロボットの長期利用と物語的自己
働き続けるうちに、人生の語りは変わっていく
分身ロボットを通じて働き続けることは、その人自身の人生の語り方にどんな影響を与えるのか。パイロットたちへの縦断的なインタビューから、時間の経過にともなう変化を追いました。
外出が難しい人が、分身ロボットを遠隔操作してカフェで働く——その働き方を何年も続けた先で、その人自身の「自分は何者か」という物語は、どう変わっていくのでしょうか。
背景
分身ロボットカフェでは、外出困難な人々が「パイロット」としてロボットを遠隔操作し、接客の仕事に従事しています。単発の体験や短期的な効果を調べる研究は増えてきましたが、こうした社会活動が長期的に継続されたとき、パイロット自身の人生の語り(物語的自己)にどのような変化が生まれるのかは、まだ十分に描かれていませんでした。
リサーチクエスチョン
分身ロボットを通じた長期的な社会活動への参加は、パイロットの物語的自己——過去・現在・未来についての解釈——にどのような影響を与えるか。
研究の方法
分身ロボットカフェのパイロットを対象に、複数の時点にわたる縦断的な半構造化インタビューを実施しました。就労を始めた経緯、続けてきた中での気持ちの変化、将来への見通しの変化などを聞き取り、語りの構造的な変化に着目して質的に分析しました。
わかったこと
ロボットアバターを介した就労の継続は、パイロットが自身の過去の経験を再解釈したり、将来への見通しを新たに描き直したりする契機になっていることが示唆されました。この知見は、「アバターで働く」という一回きりの体験ではなく、継続的な実践としての価値を考えるうえでの土台になっています。