VRSJ 2024 · with Cluster

ながらメタバース

現実とバーチャルを同時に生きる

非没入型のメタバースは、現実世界の作業をしながら「ながら」で使われている。実環境とバーチャル環境間のマルチタスキングの実態を調査し、cluster社との共同研究で「Cross-Reality Lifestyle」という概念にまとめました。

スマートフォンやPCから気軽にアクセスできる非没入型のメタバースは、HMDをかぶって没入するVRとは違う使われ方をしています。家事をしながら、仕事をしながら——現実世界の作業と「ながら」で利用されている実態があります。

背景

従来のVR研究の多くは、ユーザーが仮想環境に完全に没入している状態を前提としてきました。しかし実際には、多くのユーザーが物理空間での活動と並行してメタバースを利用しています。この実態を正面から捉えた研究はまだ少なく、まずは非没入型メタバースにおけるマルチタスキングの実態を調査することから始めました。

リサーチクエスチョン

非没入型のメタバースにおいて、ユーザーは実環境とバーチャル環境の間でどのようにマルチタスキング(「ながら」利用)を行っているか。また、物理空間とバーチャル空間を組み合わせて生きる「クロスリアリティ・ライフスタイル」は、どのようなパターンに整理できるか。

研究の方法

非没入型メタバースのユーザーを対象に、実環境・バーチャル環境間のマルチタスキングの実態を調査。この調査を土台に、クラスター株式会社メタバース研究所との共同研究として、物理・バーチャルの組み合わせ方を分析する概念枠組みの構築に発展させました。

メタバース上のライブ会場に集まった多数のアバターが、ステージを演奏するアバターを見上げている様子
メタバース上のライブ会場に集うアバターたち。現実と地続きの「暮らしの場」としてのメタバースを象徴する一場面(Hiroi et al., 2025より)

わかったこと

調査からは、非没入型メタバースが料理や仕事の合間に自然に立ち上がり、現実の暮らしと地続きに使われている実態が見えてきました。後続の共同研究では、この現実とバーチャルの重なり方を、一方が他方の経験を強める(Amplification)/別の等価な選択肢になる(Complementary)/同時に関わることで新しい経験が生まれる(Emergence)の3パターンに整理し、「クロスリアリティ・ライフスタイル」という捉え方と、それらを連続的な特性として分析する「ACEキューブ」の枠組みにまとめました。